第101回 二科展 開催 (2016年8月31日〜9月12日)
第101回展を迎えて:田中 良 理事長
南から北へと、災害が続く年の開催であったが、入場者は例年通りの盛会となり改めて伝統の重みを知る。会場は、全会員の工夫努力と働き、また会友出品者も含めて、作品の充実ぶりに感動した。各階の作品の配置等、各部門夫々配置の妙を得て大変好評であった。福島県の高校生の大作も、指導応対した理事、事務局長らの骨折りで会場に陳列できた。今年のチャリティーではNHK厚生文化事業団の他、熊本地震被災地へも売上げから寄付する事ができた。出品された各部会員の皆様にお礼を申し上げたい。
また、コラボ展示の人気は益々盛んになり、これからも会員諸氏のアイディアと努力、四部門の会員有志のご協力に期待する。
さて、世情の動勢か出品者がやや減少傾向にある。会として重要な課題であり今後の支部活動が大いに期待される。健康に留意し、来春も素晴らしい作品を。
|第101回二科展 特別展示企画|
第101回二科展 コラボ展示
昨年、大好評だったコラボ展示は、今年第2回を迎えるにあたり、1階休憩室4室を追加して展示会場面積が2倍になりました。メインテーマは昨年と同様「あそび」は変えず、サブテーマを「ネコ100態」に「イヌ」を追加して「ネコ・イヌ100態」となりました。
第2回コラボ展示の出品作品は、前回のネコも居れば新しいイヌも居る、そして両方のネコ・イヌも一つの作品の中に居るような作品が寄せられました。また、今回はコラボ展示作品記録としての「目録」と「ポストカード(32点抜粋)」を制作して販売。
今年の第101回(第2回)二科展コラボ展示も多くの観客を魅了して大好評でありました。
第101回二科展 総評(絵画部・彫刻部)
「これからの事など」中原史雄(絵画部)
審査は、例年どおり四日間、翌日の内閣総理大臣賞、会員賞なども含めおおむね順調に決定された。今年も多数決でスムーズに行われた審査。初日の懇親会で外部審査員の本江邦夫氏からも、公平で透明と有難い評価を受けている。現状は、九年前の改革で、いろいろな問題を解決し、皆んなで築いたものだ。しかし、新たな一歩となった今、培ってきたものが重要としたうえで、一石を投じたい。審査の規準と方法は、いまのままでいいのか。絵画表現という感覚の世界で、すべて挙手で決まる。平等ゆえに見遁しているもの、抜け落ちたものがあるのではないか。すっきりとだけでなく不協和音への配意など検討が必要だと思えるのだ。昔に戻るというトラウマが付き纏うがあえて提案したい。
今回、北海道に飯田由美子、大築笙子の二人、秋田県に石黒厚子とそれぞれ会員が誕生したことは、二科会として明るい材料となった。さて、審査中に印象に残った作品を二、三あげておこう。作業船を描きつづけてきた高山章亮の「作業船(群船)①」相変わらずのテーマでありながら、見事に自分の造形を創りあげた、船と水の色も響き合って美しい。このように地道に努力し、表現を研く人達が会を支えている。上村伊佐子「Days Of Wine And Roses」今回はフォルムが大胆でリズミカル、ユーモアも感じる非具象で、二科伝統の洒落っ気がある。共に会員推挙。二科賞の今村「Force ー大地ー」モノクロームでうねるような独特の表現が何よりの魅力。上野の森美術館奨励賞の中山かほり「流木Ⅰ」、初出品で受賞、対象を俯瞰で捉えたリズムがよく、シンプルな画面は社会性も感じさせる。二科新人賞の尾中文「「生」的倒錯」は、若い人には珍しく粘っこい描写表現で心象を描いた。これからが楽しみである。
他にも多くの作品からチャレンジする姿勢が見えてきたが、ほどほどで止まっていて惜しい。思い切った表現には、勇気が必要だし不安もある。けれど、その踏込みが活き活きとした表現に繋がるのだが…。昨年の「伝説の洋画家たち」展、その一点一点から造形に挑む気概を見せ付けられた。私たちは、改めてその原点に思いを馳せるよう求められている。
「鑑賞雑感」登坂秀雄(彫刻部)
第101回二科展が8月31日から9月12日まで(6日休館日)12日間、国立新美術館において開催されました。
第92回展から国立新美術館に会場を移して10年目。ローテーションによる会員の展示委員の作業進行も定着してきて、配置計画、展示進行の指示が的確に行われるようになってきました。作業の安全性とともに、協調性が高まり、公募団体として共同意識の高まりにも繋がって行く事と思います。
AからEまでの室内展示室と、石彫・金属彫刻中心の野外展示室は、緩やかな有機的導線に導かれるように、表現形態と素材との関係が加味されてひとつ一つの作品との対話を大切にした配置がなされているように感じました。特に昨年の第100回展特別展示室「戦後二科を牽引した作家たち」の為に拠出した250平方メートルの展示スペースが戻り、パネル設置なしのE展示室として計画された展示空間は、ゆったりと鑑賞しやすい演出がなされていました。
室内展示室と野外展示室をつなぐ休憩室は、本年はコラボ展の展示スペースとなりました。昨年に引き続き、絵画・彫刻・デザイン・写真の4部門の会員参加のコラボ企画で、本年は「ネコ・イヌ100態」のサブタイトルをつけての展示となりましたが参加作家の肩肘張らない作品たちが和やかな雰囲気を醸し出し、鑑賞者に一時の息抜きの対話の場を与えていることが感じられました。
10年前に東京都美術館より国立新美術館に移行した機会に、展示計画基本概念として、定位置を決めない事をモットーに、導線を重視しつつ、更に偏りのある部屋作りをしない事を会員の総意としてきました。その結果として優しい会場空間にはなったと思いますが、インパクト性は如何かと、少し危惧するところです。
辛口の批評が飛び交っていた時期もありますが、20世紀の芸術運動体的意識が21世紀に入り個の意識に変容してきたのかとも思います。私の出品した当時は、二科彫刻のイメージは、抽象性の高い作品が多いと思っていましたが、近年は具象傾向の強い作品が増え、半数以上を占めていると感じます。会場をゆったりと眺め回すところ、表現方法は多様だが、それぞれが生への探求の表出と見るべきであろうと感じます。
最後に、ギャラリートークに関して、フィギィアー性の高い作品とコンセプチュアルアート性の高い作品を交えての企画は、二科の特徴を示すいい機会となったと思います。
事務局だより
年に一度の秋の二科展も沢山のドラマを繰り広げながら無事に終了する事ができました。そして、今回の巡回展では運送システムに新たな試みを加え7つの都市を半年かけて巡ります。一つのイベント開催には、沢山の方々の努力の結集が必須となりますが、年齢を感じさせない先生方のお働きぶりに、心より感謝いたします。
その年の展覧会を窺い知ることの出来る刊行物も、作品集、受賞者名簿、出品者目録、被災地児童・生徒特別展示を纏めた小冊子、そして今年からコラボ展示作品目録も加わり、充実して参りました。また、二科展のホームページである二科展ドットコムでは、4部門の受賞作品や二科展情報、絵画・彫刻ギャラリー頁には、会員会友の作品が蓄積され、パソコンだけなく、タブレットにも対応し、閲覧し易くなりました。
はらはらした事としては、展示日に東京直撃と予報された大型台風10号の襲来。(結果は予報のコースを外れて心配も杞憂に)又、定例の二科展ミニコンサートと美術館主催のジャス演奏とが同じフロアで、30分間バッティングするという場面もありましたが、双方の音色が影響される事もなく、それぞれに大盛況であった第101回二科展でした。
全国の会員が一堂に顔を合わせる事の出来るこの機会に開かれた会議は、理事会、評議員会、支部長会議、巡回展会議、4部門会議、そして担当委員による会議(作品集・展示・総務・広報・義援活動・コラボ等)と盛り沢山。常に情報を共有しながら建設的な話し合いが出来る二科会。多くの人の声に耳を傾け、反省を踏まえ、次回に繋げようとする意気込みが感じられる二科会。事務局は、先生方のパワーに後押しされて、前進して行きたいと思っております。
地震や災害が多い日本。周辺国や世界情勢も予断を許さない昨今です。一作家としては微力でも、二科会メンバーとして出来る事の可能性は広がって行きます。二科展がこれから先も無事に開催できる平和な日本でありますよう、切に願わずにはいられません。
事務局長 塙 珠世
NIKA101_2016
▲絵画部:ギャラリートーク
▲絵画部:会場風景1室
▲絵画部:会場風景2F
▲彫刻部:ギャラリートーク
▲彫刻部:会場風景
▲彫刻部:会場風景
チャリティー報告
今年も4部門の作品寄贈協力会員により、多数の作品が集まり、来場の方も楽しみにして頂けるコーナーとなりました。皆様のご協力により、収益の全額を寄付することができましたことをご報告いたします。
■寄付金額合計:702,000円
■NHK厚生文化事業団:500,000円
■熊本県文化協会:202,000円
4月14日、熊本地震が発生し、甚大な被害を被った事から、本年の寄付先を熊本県文化協会とし、被災者でもあり、義援担当委員でもある木戸熊本支部長より目録が贈呈されました。
また、ショップでは、作品集、絵葉書とともに二科エコバッグ、コラボ絵葉書、作成冊子を販売しました。
▲二科ショップ:チャリティーコーナー
2016年度 義援活動報告
グラフィティアートに挑戦
未曾有の大災害となった東日本大震災が起こった2011年より5年間、被災地児童を力づけようと小学校を訪れ、絵画教室を続けてきた。本年度は高校生を対象にして被災地の高等学校の美術部員に絵画表現の多様性を経験して貰おうと美術指導を実施する事に決定し「グラフィティアートに挑戦しよう!」というテーマを決めた。福島県の高校へ指導内容の主旨、趣意を説明、学校の意向等を打診したところ県立いわき総合高等学校の快諾をいただき実現の運びとなった。大震災の本震、余震により校舎内のひび割れが激しく校舎の改築を余儀なくされたいわき総合高等学校で、6月30日、7月1日の両日、大判の水彩紙を継ぎ足しし即興的に種々の素材で自由に描く実施案を説明し画材(アクリル絵の具、カラースプレー、ローラー等)を調達し寄与した。校舎外壁に養生を施した大画面に、生徒達は小雨の中夕暮れまで制作に打ち込んでいた。その制作風景等をとりまとめた小冊子を作成し部員各自に配布した。
また絆通信の絵葉書は、及川宮城支部長の協力により、南三陸町からの避難者(登米市仮設住宅)に配布する事ができた。又、須田福島支部長の協力により大震災が起こった日から現在に至るまで、自衛隊や警察と協力をしながら当時、市民の人命救助を最優先し、災害支援を行ってきた消防隊の皆様へも相馬地方広域消防本部等を通して配布した。
2012年に発足した二科会義援活動チームは担当メンバーを変えて2016年より熊本大地震の災害支援活動に向けて再スタートしている。形は変わるかもしれないがこれからも東日本被災地の復興を応援していきたい。
(川内 悟)
第101回二科展 被災地生徒作品特別展示|小冊子
◁詳細は第101回二科展 被災地生徒作品特別展示 小冊子をご覧ください。(左画面、または下の■表示■をクリック)
■表 示■
▶ 帝国ホテル NIKA ART SPOT「S20特別賞」作品展示
帝国ホテル NIKA ART SPOT「S20特別賞」作品展示
帝国ホテル 東京 本館「NIKA ART SPOT」において「S20特別賞」作品を展示いたします。
2024春季二科展「NIKA+nika/S20号」コンクールにて「S20特別賞」を受賞された4名の
作品を前期と後期に分けて1年間展示いたします。
ご高覧頂きたくご案内申し上げます。
■会期:前期=令和6年5月10日(金)〜令和6年11月12日(火)
後期=令和6年11月12日(火)〜令和7年5月9日(火)
■場所:帝国ホテル 東京 本館 中2階「NIKA ART SPOT」
住所:東京都千代田区内幸町1-1-1
■主催:公益社団法人 二科会
■S20特別賞受賞作家
前期:荒井洋子・出月智子
後期:近藤隆弘・番場美和子
◀帝国ホテル 地図・交通アクセス QRコード
日比谷駅:東京メトロ 日比谷線・千代田線・都営地下鉄三田線 A13出口から徒歩3分
銀座駅:東京メトロ 日比谷線・丸の内線銀座線C1出口から徒歩5分
有楽町駅:東京メトロ 有楽町線徒歩7分
JR有楽町駅:山手線、京浜東北線 徒歩5分
▶「 2024 春季二科展 」2024 SPRING NIKA ART EXHIBITION[終了]
「 2024 春季二科展 」2024 SPRING NIKA ART EXHIBITION[終了]
会 期:4月18日(木)〜5月2日(木)
9:30~17:30(入場は17:00まで)
最終日は14:30 終了(入場は14:00まで)
会 場:東京都美術館 1階 第1・第2・第3展示室
東京都台東区上野公園8-36(上野公園内)
▶春季展 授賞式:4月18日(木) 午後1時より 場所:1階2室
▶絵画部ギャラリートーク:4月18日(木) 授賞式終了後 開催
▶ 帝国ホテル 二科サロン 第106回二科展 受賞者小品展(第四期)終了
帝国ホテル 二科サロン 第106回二科展 受賞者小品展(第四期) 開催
帝国ホテル二科サロンにおいて第106回二科展受賞者から選抜された
12名による小品展(第四期)を開催いたします。
・会期=2023年10月3日(火)〜2024年1月9日(火)
(初日:午後3時より 最終日:午後1時まで)
・会場=帝国ホテル インペリアルタワー・ギャラリー(東京都千代田区内幸町1-1-1)[入場無料]
・主催=公益社団法人 二科会
●作品出品者▷徳永スエ子・芝田満江・中野紀三朗・柳澤綾子・すぎもと 和・菊島ちひろ
佐藤幸光・坪田裕香・石見香賀里・桑子純子・前川普佐雄・矢島初子