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第109回 二科展 開催 (2025年9月3日〜9月15日)
|第109回二科展 開催|生方純一 理事長
異常気象と言われた2025年の第109回二科展は、制作の時期から搬入・審査、展示、開催期間中も例年を大幅に超えた猛暑。秋の気配は微塵も感じられず、出品者はじめ関係者も大いに体力を消耗しました。そうした環境の中でも出品者の制作意欲は衰えず、昨年を上回る出品者数でした。
コロナ禍も少し残り、少子高齢化の進む中で環境は芳しくないのではないかと案じていましたが、パワフルな二科の出品者の意欲には感じ入りました。各支部の関係者の率先した指導なども大きな要因であることに相違ありません。
109回展は展示委員や事務局関係者による事前の緻密なプランにより会場は大変見やすく見応えのある展示になったと思います。
特にU35コーナーや動物をモチーフにした作品を一堂に集めたアニマルコーナーなども設け、人気を博しました。また、このコーナーでは前半の期間に一般入場者による人気投票でオーディエンス賞を決めました。
1階、2階、3階と会員、会友、一般と展示作品の傾向毎に分けて部屋割するとともに、休憩室を活用した有機的な展示ができたと思います。
彫刻部の巡回展に回す作品の披露目展示、チャリティ作品や作品集・絵ハガキの販売コーナー、全国支部の活動の様子が解る地図やポスター、案内状などを展示。また春季展でのS20号の優秀作品を展示するなどして大いに活用されました。
109回展は審査による授賞作品の点数が例年に比べて少なめでしたが、それだけに充実した作品を選ぶことができました。同じく会員・会友の推挙も少なめでしたが、期待できる作家を推挙することができたと思います。
入場者は少し減ったが昨年同様の盛況であり、特に外国人の入場者が目立ちました。海外では余り団体展がないので、多くの人が興味深く鑑賞している様子が窺われました。
関係者は本年の反省を踏まえて、すでに第110回記念二科展への備えを始めています。
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審査所感 ー 109回展会場にて|粕谷 正一
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今から50年前、私が美大を目指して浪人していた頃、東京芸大油絵科の倍率は40倍だった。現在は少子化の影響もあり、倍率は当時と比べると私立の美大も含め、半減している。小中高の全てで、美術の授業が半減されてから久しいが、さらに美術部他すべての部活動が、この数年で学校から無くなり、地域に移行することになっている。児童生徒は美術を学ぶ機会がどんどん減っているのである。
近年の美大油絵科では、映像やインスタレーション等の卒制も認められ、若者の絵画離れは加速している。また、二科の場合はU35という配慮もあるが、出品料その他もろもろの問題で団体展出品に二の足を踏む若者も多く、何のしがらみもないコンクールに一攫千金狙いで出品する学生もいる。
絵画部2階1室
今年の審査で驚いたことは、特選がたった4人にとどまった事。106回展は22人。107回展は26人、108回展は29人と多くの出品者が特選の栄誉に輝いていた。二科小史を遡ってみると第45回(1960年)二科展が4人の特選と記されていた。当時は作品のサイズは小さく出品者数も少なかったと想像できる。今年の特選が少なかったのは、おそらく技法的には問題ないが、二科の雰囲気に埋没した作品やオリジナリティが感じられない作品、以前の出品作と代わり映えしない作品などが多かったからなのだろうか。
一般の部の109回展をて、気になる作家をあげる。津野勝己《確かな描写力である。奥行きが欲しい》、羽根杏綸《写実的な描写力がある。オレンジの色面が目立ちすぎ》、濱川知世《何気ない風景の空気感が見事》、岡田礼子《子どもの表情が面白い。上部の亀が目立ちすぎ》、土肥研二《構成力がある。左下の白が未完成》、佐久間りん《テーマははっきりしている。主役だけではなく、脇役も必要か》、前岡千春《インパクトはあるが、色面の整理を》。
最後に今年の春季展やS20号出品者の中から本展で会員、会友の推挙者や受賞者が複数誕生したことに、二科会の光明が見えた気がした。
110回記念展には今一歩踏み出した作品を期待したい。
彫刻部 総評|𠮷野 毅
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気候に変動が起きたような猛暑から、美術館に入ると、心地の良い空間にホッとして救われたような気分になった。
▲彫刻部:展示会場
第109回展の総評のはじめに標したいのは、陳列をするため作品が搬入された場所から、作品を移動するときに起きた事故である。台座を持ち上げたとき、台座から少女の像が倒れ、像に亀裂が入ってしまったのである。連絡を受けた作者は急いで駆け付け、倒れた像と同じ水性樹脂を使用している会員たちの協力で、無事に修復をすることができ、陳列もすることができたのは不幸中の幸いと思いたい。しかし、防げた事故でもあったかもしれない。
作者は「台座と像の接点が確実ではなかった。会員の皆さんの指導で勉強になった」と言ってくれてはいるが、搬入された作品の保管、管理を問われたとき、彫刻部として弁明の余地がないように思われる。運営の責任者として、深く考えさせられた事例となった。
彫刻の展示会場の入口は以前あった衝立が無くなったことで、入口から遠くまで見渡せるようになり、広々とした豊かな展示会場になった。そして鑑賞者の目線を考慮しながらの展示は、作品からのメッセージが明確に聞こえるようになったと思われる。
展示会場を見渡すと、会場の粗ほぼ中央に、人だかりがしている作品があった。 (この作品は鑑賞者の接触によって変化する作品です)との作者のコメントが添えてあった。いつも数人の子供たちが、ときには大人たちも夢中になって、小さなアヒルを動かす姿は、とても微笑ましく、アヒルと戯れる人たちの顔は実に素情が豊かであった。
作者曰く、創作の体験を共有できたらと‥‥。
かつて二科会の彫刻は、表現領域が一番広いと、いわれたことがあった。石・木を素材としている作家は、実材からの声が聞こえているかのように、美しいフォルムを作り出している。木から縫い包みを掘り出した若い女性の彫刻家、張子で馬を表現した作家も女性だった。二科の彫刻部はおもしろいと新カテゴリーも認知されてきたようだ。
二科展の最後の三日間の鑑賞者は大変多かった。
支援講座・ワークショップ 9月14日 13:30〜 3階講堂
「頑張らない、けど前を向く」中原史雄
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▲支援講座・ワークショップ 風景 絵画表現の面倒なところは、描いた自作をなかなか客観的に見られないこと。にもかかわらず、他の人のそれは良くわかるのだけれど。また、頑張って描いても、結果が伴うとは限らない。逆に描き過ぎて画面を重り、整え過ぎてリズムを失くしてしまうことも。二科展に60年以上出品している古狸になると、描いた人から作品のコメントを求められることが多く、上手に描けないとか、私は才能が無いのでは、などの相談を受けこともある。
そもそも絵画の表現とは、自分の複雑な心の襞を色と形で具現化すること、しかも個性的であることが大切。また、理屈では計れない感覚の仕事で、何とも難儀としか云いようがない。だが魅せられた以上はポジテブに手を動かして、自分の表現を探るしかないようだ。
ずっと以前、私が美術大学で受けたアカデミックな教育は、その頃の美術界の動向だった抽象表現とかアンフォルメルといった激しいものとあまりにも乖離していた。何をどう描けばいいのだろうか、自分の表現がず思い悩む日々が続き、いっそ描くことを止めようと思ったことも。しかし、この頃の苦い体験が「ダメ元」という都合のいい思考を私に与えてくれ、いま制作の大きな糧となっている。
キャンバスの中は自分だけの宇宙空間、誰に頼まれるでもなく絵筆を持っている。何でも効率を求められる今日この頃、役に立つとも思えぬことにのめり込んでいる。こんな素敵で贅沢な時間はない。そう思えたらた新たな気持ちで描けるのではないか。
今回の支援講座でうれしかったのは、参加した90名の中に数名、第109回展の落選者がいたこと。老体にムチ打ってでも語りたかったのは、なかなか結果がついてこないと思っている人達に、決して才能の有無ではなく意識の持ち方次第、自分の中の新しさに「まあ、ええやん!」とトライする、つまり前を向く姿勢です。
▶ 帝国ホテル NIKA ART SPOT「S20優秀賞」作品展示
帝国ホテル NIKA ART SPOT「S20優秀賞」作品展示
帝国ホテル 東京 本館「NIKA ART SPOT」において「S20優秀賞」作品を展示いたします。
2025春季二科展「NIKA+nika/S20号」コンクールにて「S20優秀賞」を受賞された4名の
作品を前期と後期に分けて1年間展示いたします。
ご高覧頂きたくご案内申し上げます。
■会期:前期=令和7年5月8日(木)〜令和7年11月12日(水)
後期=令和7年11月12日(水)〜令和8年5月8日(金)
■場所:帝国ホテル 東京 本館 中2階「NIKA ART SPOT」
住所:東京都千代田区内幸町1-1-1
■主催:公益社団法人 二科会
■S20優秀賞受賞作家
前期:谷 いづ美[東京]「迷宮」/ 平山 輝[大阪]「助けてほしい?」
後期:瀬川 ゆかり[京都]「隠れ家の森」/ 番場 美和子[新潟]「シグナル」

◀帝国ホテル 地図・交通アクセス QRコード
日比谷駅:東京メトロ 日比谷線・千代田線・都営地下鉄三田線 A13出口から徒歩3分
銀座駅:東京メトロ 日比谷線・丸の内線銀座線C1出口から徒歩5分
有楽町駅:東京メトロ 有楽町線徒歩7分
JR有楽町駅:山手線、京浜東北線 徒歩5分
▶「 2025 春季二科展 」2025 SPRING NIKA ART EXHIBITION[終了]
「 2025 春季二科展 」2025 SPRING NIKA ART EXHIBITION[終了]

会 期:2025年4月18日(金)〜5月2日(月)
9:30~17:30(入場は17:00まで)
最終日は14:30 終了(入場は14:00まで)
会 場:東京都美術館 1階 第1・第2・第3展示室
東京都台東区上野公園8-36(上野公園内)
▶春季展 授賞式:4月18日(木) 午後1時より 場所:1階
▶絵画部ギャラリートーク:4月18日(金) 授賞式終了後 開催
▶ 帝国ホテル NIKA ART SPOT「S20特別賞」作品展示
帝国ホテル NIKA ART SPOT「S20特別賞」作品展示
帝国ホテル 東京 本館「NIKA ART SPOT」において「S20特別賞」作品を展示いたします。
2024春季二科展「NIKA+nika/S20号」コンクールにて「S20特別賞」を受賞された4名の
作品を前期と後期に分けて1年間展示いたします。
ご高覧頂きたくご案内申し上げます。
■会期:前期=令和6年5月10日(金)〜令和6年11月12日(火)
後期=令和6年11月12日(火)〜令和7年5月9日(火)
■場所:帝国ホテル 東京 本館 中2階「NIKA ART SPOT」
住所:東京都千代田区内幸町1-1-1
■主催:公益社団法人 二科会
■S20特別賞受賞作家
前期:荒井洋子・出月智子
後期:近藤隆弘・番場美和子

◀帝国ホテル 地図・交通アクセス QRコード
日比谷駅:東京メトロ 日比谷線・千代田線・都営地下鉄三田線 A13出口から徒歩3分
銀座駅:東京メトロ 日比谷線・丸の内線銀座線C1出口から徒歩5分
有楽町駅:東京メトロ 有楽町線徒歩7分
JR有楽町駅:山手線、京浜東北線 徒歩5分
▶「 2024 春季二科展 」2024 SPRING NIKA ART EXHIBITION[終了]
「 2024 春季二科展 」2024 SPRING NIKA ART EXHIBITION[終了]

会 期:4月18日(木)〜5月2日(木)
9:30~17:30(入場は17:00まで)
最終日は14:30 終了(入場は14:00まで)
会 場:東京都美術館 1階 第1・第2・第3展示室
東京都台東区上野公園8-36(上野公園内)
▶春季展 授賞式:4月18日(木) 午後1時より 場所:1階2室
▶絵画部ギャラリートーク:4月18日(木) 授賞式終了後 開催
▶ 帝国ホテル 二科サロン 第106回二科展 受賞者小品展(第四期)終了
帝国ホテル 二科サロン 第106回二科展 受賞者小品展(第四期) 開催
帝国ホテル二科サロンにおいて第106回二科展受賞者から選抜された
12名による小品展(第四期)を開催いたします。
・会期=2023年10月3日(火)〜2024年1月9日(火)
(初日:午後3時より 最終日:午後1時まで)
・会場=帝国ホテル インペリアルタワー・ギャラリー(東京都千代田区内幸町1-1-1)[入場無料]
・主催=公益社団法人 二科会
●作品出品者▷徳永スエ子・芝田満江・中野紀三朗・柳澤綾子・すぎもと 和・菊島ちひろ
佐藤幸光・坪田裕香・石見香賀里・桑子純子・前川普佐雄・矢島初子















